たけきの藩国日誌 - R2

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zoom RSS 日誌30「従軍日誌 〜抜粋〜」/竹戸 初

<<   作成日時 : 2009/01/14 13:04   >>

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 ギリっと軋む鎖の音に、昏倒していた竹戸 初は覚醒する。但し意識こそ回復したものの、思考能力までは追いついていない。

(ここは何処だ?)

 幾つかの情景が、断片的に脳裏に瞬く。

 白夜のダークサマーレムーリア。平原一面を埋め尽くした軍勢と軍馬の醸しだす、皮革と汗の臭い。各藩国や騎士団の旌旗。成功した奇襲。驚愕した敵兵の顔。煌く甲冑と刃。

(よけ藩医療整備部隊の方々には、満足なお礼も言っていない)

 時系列が出鱈目な回想に、今頃になって思い至る過失。冷静なつもりでも、充分に頭に血が昇っていたのだろう。15人一組のエリート兵の部隊は、二箇を撃破し一箇を半壊させたと思う。

(この後で我々は、奇妙な模様が描かれた敵と遭遇した筈)

 帝國軍の包囲殲滅を期した敵の第一軍は、山を降りた暁の円卓の軍勢と遭遇し主力を喪った。
 敵の奴隷兵は一箇の部隊こそ150名と多いが、主力が崩れれば普通は潰走するものだ。しかし、精霊回路と思しき模様を描かれた彼等は、臆する事なく戦いを挑んできた。

(と言うよりも、あれは意思も意志もない単なる道具だった)

 敵とは雖も。いや、戦場で相対する敵であればこそ、自らの意に反して操られている兵を討つ事など、たけきの藩国の、帝國の、各人の正義に反した。

(その判断そのものは、間違っていなかった筈)

 但し、実力は伴わなかった。

 敵の動きを馬の脚力で牽制し、出鼻を挫く目論見は容易く失敗した。ならば、とばかりに敵奴隷兵に狙いを定めて、敵の動きを押さえ込むべく加えた攻撃も失敗した。
 今度こそ、三度目の正直とばかりに敵奴隷兵の模様を消すべく攻撃し、漸く一箇部隊を殺さずに無力化できたが……それだけだ。

 十二箇の敵部隊のうち、三度も挑んで僅かに一回の成功。手加減をした上での、当然過ぎる結果だった。

(それでも、白石藩王と敵皇子との一騎打ちで幕なら、大団円だったかもしれない)

 実際には、その後でレムーリア遠征軍は無名騎士藩国に侵攻した敵第二皇子の軍勢を相手に、大返しを強いられた。

(その選択に、誤りは無かった)

 実際、無名騎士藩国への援軍は手遅れ間際に到達したのだ。敵の大虐殺を防ぐ為には、決して看過できない。

(そして、我々は決断した。敵の奴隷兵を殺す事を)

 結果を見れば、黒オーマの英雄・バロが援軍として駆けつけてくれたのだから、この殺生は無用だったかも知れない。自分達は、たとえ全滅してでも「キレイ事」と嘲られる正義を貫くべきだった。

(だが、もしも同じ決断を強いられたとしても、我々は同じ決断をするだろう)

 無論、援軍到着を知っていれば、話は別だ。誰が好き好んで、本来は救出すべき対象を切り捨てるものか。
 しかし、あの段階で自分達には他の選択は無かった。七箇の奴隷兵の部隊を倒して進む以外に。
 
(あの時、「どこかの誰かの未来の為に」戦う事は出来ても、「どこかの誰かが何とかしてくれる」事を当てにして、敵の大虐殺を看過する事など出来なかった!)

 誤りが無くとも、間違っていなくても、時として悲劇は起こる。誰を恨むべくも無い。出兵を選択したのも、戦う事を択んだのも、全ては自分自身なのだから。


 記憶と意識がそこまで回復した瞬間、五体を戒める鎖の痛みが、急速に戻ってくる。脚の踵は地面に着かず、体は宙に吊るされている。

「嗚呼。もう一度だけ過去に戻れたら、あの発言だけは撤回しているかも」

 あれは、ダークサマーレムーリアで敵奴隷兵と交戦する直前。たとえ内心は如何に悲壮であろうと、それに呑まれずに平然と軽口を叩くのが、たけきの藩国。
 敵奴隷兵を殺さずに無力化する難題に、誰もが固くなりかけている空気を解すべく、彼は叫んだのだ。

「そうだ! 今こそ、摂政閣下の褌と靴下(の悪臭攻撃で)敵奴隷兵を悶絶させて無力化する時です!」

 幾ら何でも、他国と合同している出陣中に、このネタは不味かった。口にした瞬間、以前から風紀委員に問題視されている舌禍が、本格的に取り返しの着かない大問題になってしまった。

(私自身は「面白ければ良い派」で、ハンターでも変態でも無いのに!)

 自分でも無駄だと思う弁明は、予想通り何の役にも立たなかった。むしろ、その野次馬根性こそが変態を蔓延らせるのだと、より罪状が重くなった気がする。

「……で、今はいつだろう?」

 もう、時間の感覚が全く狂っている。ここは、たけきの藩国更正施設。それも、前代未聞の脱獄を成功させた事がある彼が収監されているのは、最下層に存在する最も兇悪犯が宛がわれる一室。

 日の光はおろか、満足な灯りもない。仄かな照明は、室内の白一色を引き立たせて、収監されている囚人を狂気と錯乱の世界に誘う役割しか果たしていない。

「藩王さま……僕(やつがれ)が木乃伊になる前に、思い出して下さいよ」

 以前に収監された摂政以下が、収監された事実すら失念された事で餓死寸前まで追い詰められたという。今この瞬間に思い出したくはない事を思い出し、竹戸 初は目蓋を閉じた。睡眠状態に入り、体力を温存する為に。

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 以上、お粗末さまでした(平伏)。

 次は、ひわみさんにお願いして宜しいでしょうか。タケモンや金城さんでお忙しいなか恐縮ですが、お願い致します。

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